段ボールからの声。すごいぞやまだくん鴨川旅館編Vol.2

つづき

 


業務は今日からなので改めてきちんと挨拶をする。みんな優しそうで良い感じだ。

僕がこの時聞いた限り従業員の中でも3組は兄弟や親子、親戚関係の人がいるらしい。そのためここでは下の名前でみんな呼び合うとのこと。実の家族にすらあだ名で呼ばれている僕のことを下の名前で呼ぶのは高校時代の知り合いぐらい。後はほぼいないのでなんだか照れる。中学の時唯一僕を下の名前で呼んでくれてちょっと好きになったさやかちゃんはその後僕の幼なじみと付き合った。


ここでは厨房配属になり調理場(調理、盛り付けなど)と洗い場(洗い物、片付け)に役割が分かれている。今日は洗い場だ。同い年で同じ派遣会社の寮では隣部屋のやつとペアを組んで作業をすることに。期間も同じぐらい働くそうだし仲良くなれそうだ。相棒と呼ぼう。


正直洗い物はあんまやりたかないけど、目の前で肉を焼いたり魚を捌いたり煮物を仕込んだりしていて料理が身近にある環境は楽しい。高校生の時もホテルの厨房でバイトしたことはあるがその時とは全然違う。


午前の業務を終えると長めの休憩(この日は5時間半)に入る。寮に戻り一眠りし起きたところでEDMと何かが聞こえてくる。最初は高木が歌っているのかとも思ったがどうやら違うようだ。怒鳴り声に近い。「んんんんっ!」「うおおぉっ!」「おぉおぉぉっ!」「WRYYYYYYY!」この家にはDIOでも住んでるんか。後から聞いたところ寮の1階は会社のちょっとしたスペースになっておりそこで社員が筋トレをしていたらしい。知らないとビビるだろ。


午後の業務開始まで時間があるので少し街を散策することに。海は家の前にあるからよく見てるし山の方に行こうと上がっていくとまたもや変な声が聞こえる。もうやめてほしい。変な音に悩まされるのは寮だけで十分だ。正体不明の音に怯えつつも辺りを見回していると更にか細い声が。どうやらこの中からしているらしい。

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こえ。捨てられた赤ちゃんとか入ってたりしないよな。逡巡の末開けて中身を確かめることに。まずビニール袋を持ち上げるがまあまあな重さがある。慎重に上げて下ろすと袋とビニール紐で結ばれている。

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マジ犯罪とかじゃない?大丈夫?勤務初日からそんなことに巻き込まれるのは勘弁なんだけど。無理。恐る恐る開けると予想通り赤ちゃんがひょっこり顔を覗かせた。

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いや仔猫やん。うそ。かわいい。こいつだけであの重さにはならないよな、と覗いてみると4匹の仔猫が。それだけだとただ捨てられたんだろうなって感じだが、この子達はそれぞれの足を紙糸っぽいもので縛られている。その上さっきの紙紐にビニール袋、この鉄のゴミ入れ?自体に蓋もされていたし絶対に出られないようにしてここに捨てたってことか。んー、ただ飼えなくなっただけならその辺に捨てればいいのにここまでするっていうのはよっぽどこの子達が憎かったんだろうか。


保健所に連絡すると担当の人が来てくれて保護してくれることに。糸をほどいてあげたいがあまり触らず現状のままの方が良いだろうしひとまず待つことに。

 

猫が喜ぶ動画をYouTubeで探して見せる。ネズミの声とマウスポインターが画面をチラチラ動くもの。これは喜ぶかと思ったがめちゃくちゃ威嚇された。子猫といえどジジイが痰絡まったみたいな声出すんだな。気を取り直して猫 (2018.10.7 Live at 上野恩賜公園 野外ステージ) / あいみょん を流す。無反応だった。

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捨てられてた状況を考えず手前の糸さえ無ければかわいいだけで済む写真なのだが。


保健所の人は良い感じの人で良い対応をしてくれそうだった。この前一時的には保護されるけど引き取り手が見つからなかったら殺処分の可能性もあるんだろうな。そうなる前に良い飼い主さんに出会って今後の人生、いや猫生?は幸せに暮らしてくれることを願う。

 

仕事が終わった後は相棒と一緒に旅館の温泉に入り寮に帰る。僕が雪国出身でスキースノボは一通りできるという話をすると12月とか3日2人で休み取って長野とか言っちゃう?と誘われた。相棒のことは嫌いじゃないがまだ仲良くもないし僕は基本的に会社の人とプライベートで遊ぶのが好きではない。あまり行きたくないので、ん〜ありやね〜と空返事をした。


ベッドに入り寝る準備をするも高木のギターは今日も聴こえてくる。こっちは明日5時起きだぞ。次の休みは耳栓を買いに行こう。

 


つづく。